言葉にならなそうだから・・ 卒業生の最後の言葉はこれに決めた!
この年、子どもたちを送り出す前日、特別な思いで過ごしました。
夜、暗くなったクラスの中で、ひとり一年間を振り返りました。
この子たちを送り出すのか・・・と思うと、たまりませんでした。
「この日をめざしてきた」はずなのに、「この日に来てほしくない」。そう思っていました。
もちろん、最後まで悪戦苦闘を繰り返す年の方が多いです。でも、数年に一度くる、気持ちの良い終わりでした。
子どもが帰った夜の教室で、静かにしばらく過ごしてから、最後の言葉を考えます。
何度も何度も書き直します。心を表現できる言葉が、なかなか出てこないんです。
5年生6年生と、2年間いっしょに過ごしてきた卒業生。
これが、彼らに送った最後の学級だよりです。
卒業式のあと、教室で少し過ごせるんだ。
だから、そこで話すことを、ここに書いておく。
もう、言葉にならなそうだから・・・。
みんな、卒業式、どうでしたか。
しっかり、全力を出せましたか。
みんな、先生のこと、「先生」って呼んでくれて、ありがとう。
先生は、生まれてすぐ先生になるわけじゃない。
先生は、20歳になったらなれるっていうものでもない。
先生は、免許を取ったらなれるものでもない。
先生は、あなたたちに、「先生」って呼んでもらえたときに、「先生」になれるんだ。
先生は、村一番(『海の命』いっしょにやったよね)の先生になれたのだろうか。
ふと、そう考える。
4月に始まったあなたたちとの物語。
たくさん、怒ってきてごめんね。
先生、みんなのこと大好きだったんだけど、たくさんみんなを傷つけてしまったかもしれない。
先生、みんなのこと大好きだったんだけど、もっとみんなのことわかってあげられなかったかもしれない。
あなたが心に傷を負ったとき力になれなかったかもしれない。
あなたが勉強わからなかったとき、わかるようにさせてあげられなかったかもしれない。
あなたが、楽しかったとき、一緒に楽しんであげていなかったかもしれない。
あなたが、つらかったとき一緒に泣いてあげられていなかったかもしれない。
今振り返ると、そんなことばっかりだ。
先生、力不足で、ごめんね。
でも、昨日、みんなは、「学校が楽しかった」って言ってくれた。
もう、それで、先生は幸せです。
今できないことは、きっといつかできるときがくる。
それが、あなたの人生にとって、必要なことならば。
希望を捨てなければ。
先生は、そう信じてる。
だから、小学校は、「楽しい」が一番大切だと思ってきた。
学ぶことだって楽しまなくっちゃもったいない。そう思ってきた。
昨日までの勉強の中身をすべて忘れてしまったとしても、きっと、「楽しかった」という思いが、あなたをやさしくする。
たとえ、言葉を失っても、目の前の人を喜ばせることができる。まわりの人にやさしくできれば、相手が笑顔になる。
その笑顔が、あなた自身の喜びにかわる。
そして、楽しいは、無限に広がっていく。
先生は、そう信じている。
みんな、ありがとう。そして、さようなら。
どうか、こんな先生を許してね。すてきな人、「村一番の人」になってください。
(2018年3月16日『6−1のきせき』第332号ー最終号より)
そして、最後にこの歌を添えました。
外は雨・・・・。でも、あなたたちは、この雨にも意味を見つけることができる。
魔法はいつかとけると僕らは知ってる・・・。虹が架かる空には雨が降ってたんだ。
虹はいずれ消えるけど。雨は草木を育てていくんだ。虹が架かる空には雨が降ってたんだ。
いつか虹が消えてもずっと僕らは空を見上げる。
雨が止んだ庭に 花が咲いてたんだ。きっともう大丈夫。そうだ 次の雨の日のために
傘を探しに行こう。
(sekai no oari 『rain』より)
彼らは、ぼくが、この年を最後に、学校から離れることを知っていました。
中学生になっても、ぼくに制服を見せようと思っていた子どもたちは、怒っていました。
ぼくは、この子どもたちが大好きでした。
そして、子どもたちと通じる部分がたくさんありました。
もちろん、上にも書いた通り、うなくいかないことがたくさんあるんです。
でも、こういうゴールがあるかもしれないということは、励みにもなります。
また、こういう日を迎えるために、全力で取り組もうって思えます。
あと、何回子どもたちを送り出すのだろう・・・。
あの子たちは、みんな次のステップにいっている。
ぼくも、成長しなくっちゃ。