ぼくのきせき

「子どもの心に火を灯す ⇄ 自分の心に火が灯る」 実現めざした学びの軌跡

教師目線 「算数できた!」につながる家庭での声がけ ポイント5つ

坪田耕三先生の『算数的思考法』(岩波新書)は、新書になっているからもわかるように、学校の先生だけでなく、様々なジャンルの人に向けた本です。

ぼくは、とくに、保護者の方々にもこの本を手にとっていただきたいです。「算数はあんまり好きではない・・・」という方もたくさんいると思いますが、ぜひ、お子さんに声をかけて、算数の力を伸ばしてあげるためにも、おすすめしたいです。

 今回は、この本を元にして、子どもたちをみていて感じる「算数できた!」につながる手助け ポイント5つを考えてみたいと思います。

 

この仕事をしていると、教育熱心な保護者の方の多くから受ける質問があります。

 

むかしと教え方がちがうので、どうやって教えて良いのかわかりません。

 

なるほど、そうかもしれません。

 

「読み・書き・そろばん」なんていう言葉を使ったのは昔のこと。

「そろばん」は計算を意味しますが、いまは、計算は、どうひっくりかえったって、計算機にはかなわない。だいたい、「Hey, Siri! 573543わる3は?」とか「Alexa, 375かける219を教えて・・・」などと問いかければ、答えが即座にかえってくる時代です。計算をできるようにするのが算数だと捉えれば、算数を学ぶ必要がなくなってしまう。筆算すら、ほとんど使わないかもしれません。

 

では、この時代の算数を考えるにあたって、家庭でできることはどんなことなんでしょうか・・・。

 

 

1. 説明しようと思える場所を準備し、説明しようとしている姿を認める

これからの時代で必要になるのは、自ら考えて「なぜ」の答えを他者に伝えられる力です。いま小学校では、計算のわけまで説明できるようにしようと、子どもに「なぜ」を問います。「〜〜〜だから、こういうふうになる」となぜを説明するときには、大人の目から見ればたどたどしいかもしれませんが、その子どもは筋道立て考える練習をしています。だからこそ、「説明しようと思える場所」を準備し、「説明しようとしている姿を認める」ことが大人の役割です。

 

2.「自分の問いをつくる」お手伝いをする

次の問いに向かう力を身に付けたいと思って授業をしています。問題が解き終わったときに、そこから次の問題を考える。例はいろいろありますが、1年生が「4+6」で「10」という答えにたどり着いたとき、「4+6」ができればよいならばあっという間に答えにたどり着きます。これでは、「解いて終わり」。でも、ここで、先に進んでほしいと考えます。

「だったら、3+7はどうかな?」

「だったら、ほかにどんな式ができるかな?」

全部並べて考えてみようとする姿があったなら、それもすばらしい。

そこにきまりが見えてきて、「あれ?(+の)左が増えると、右が減るぞ」なんてことに気づけば、それは子どもの大発見!

とはいえ、子どもたちは、答えを出すので精一杯。「4+6」で満足するものです。だからこそ、はじめのうちは、となりの大人が声をかけ、誘って、次の問いを一緒に考えていくのがよいでしょう。いつか、その「自分の問いをつくる」ということは、習慣になっていきます。

 

自分自身で疑問を持ち、その解決を図ることで本当の知識が得られる。

ということです。知識のある人から教えられ、それを鵜呑みにして暗記をすることに価値をおくのではありません。出来合いの知識では使い物にならない。ウラのわけまで自分の頭で考えることがポイントです。「なぜ」と思い、そのわけを論理的に説明できることが大事なのです。

 (p. ix)

 

3. あきらめずに頑張ったら、その事実を認める

問題が解決できず行き詰まるときがあります。そのとき、どうするのかがとっても大事。もちろん、あきらめずに頑張ることを応援します。でも、「あきらめずに頑張って」と言っても、子どもはどうしてよいかわかりません。「あきらめずに頑張る」ということは、別の方から攻めてみるとか、ときにはいったん全部捨てて最初から出直すということ。

でも、これって、本当は勇気のいることです。だって、一生懸命やってきたことから離れるのですから。だから、ぜひ、あきらめずに頑張ったときには、それが答えにたどり着いてもつかなくても、あきらめずに頑張ったことを、まず認め、ほめてあげたいものです。ここでそれをしないと、「結果が全て」と子どもには映ります。どんなに意識的に過程を大切にしようとしても、こういう「あきらめずに頑張ったのに認めてもらえなかった」という経験の積み重ねは、あっという間に子どもたちから、「挑戦しよう」という意欲を奪ってしまいます。

 

4. 体験を通して納得を深める場を準備する

学校のカリキュラムは、教える体系ができすぎていて、あまりつまずかないようにできあがっています。試行錯誤する機会が少ない。そうすると、一歩一歩進めるように見えて、失敗を克服する機会を奪っているのです。ここからは、好奇心は育ってきません。本当は、「おや?」という疑問をもって、「なんでかな?」となり「やってみたいな」と進むエネルギーが大切。「できることをなぞる」ではなく、「ちょっと難しいことに挑戦する」ことが本当は楽しい。それを直感的に感じるためにも、「ここどうなっているんだろう?」と実物を手にして、五感で感じる経験を大切にしたいものです。そこからくる理解は、出来合いの知識とは全く違う種類のものになります。そして、こういう経験をたくさんしている子どもは、そうでない子どもに比べて「考える体力」がまったく違います。

 

5. 「タネは自分の中にある」ことを伝え続ける

問題を解いているときに、行き詰まってしまった。

そのときに、「もしも〜だったら・・・」とか「AとBはにているかもしれないぞ」と考えることが大切です。これらは解決のきっかけの例ですが、もともとこれらは、自分の中にあるものです。このような考え方ができる子どもは、算数を学んでいったときに力がついていきやすい。でも、ほっておいてできるわけではありません。もし、子どもたちが悩んでいる姿を見かけたら、「もし〜だったらどうかな?」とか「にているところはなぁい?」などと声をかけてあげて、視点を変えるお手伝いをしてあげたいものです。このような視点の変え方が身についてくると、子どもの力はぐんとあがってきます。

 

まとめ:大切なポイント

5つのポイントを見て、どう感じられますか?

1. 説明しようと思える場所を準備し、説明しようとしている姿を認める

2.「自分の問いをつくる」お手伝いをする

3. あきらめずに頑張ったら、その事実を認める

4. 体験を通して納得を深める場を準備する

5. 「タネは自分の中にある」ことを伝え続ける

これらができるのは、算数の時間だけではないということが伝わるとうれしいです。

たとえば、小さな子どもが好きな遊びに、パズルがあります。パズルは、「やってみてちがったから、やりなおす」ということの繰り返しです。迷路もそう。迷路は、「あきらめずに頑張ることの連続」の遊びとみなすことができる。

「タネは自分の中にある」ということはむずかしい感じがあるかもしれませんが、ようは「もしかしたら・・・」と考えている瞬間を見つけて、ほめるようにすればいい。たとえば料理をしていて材料がたりない。そのときに、「もしかしたら、〜〜をつかってもおいしいかもしれないぞ」なんて考えているときも、じつは算数につながるのです。

 

パズル、迷路、ブロック、料理・・・・

 

考えることにつながるこれらは、とうぜん、子どもの算数の力を磨く素地づくりとしてとっても大切な活動です。

思う存分やらせてあげてほしいと思います。

 

 

算数的思考法 (岩波新書)

算数的思考法 (岩波新書)