ビジネスの世界は「顧客が変える」! ペアトークで表現力を磨き、学力の違いをいかした授業を!
「授業をしていると、学力の違いが気になります」という声はよく聞かれます。
だから、それを何とかしようと、算数の授業では少人数で授業をしたり、一斉授業で教科書の内容を教えたりします。でも、それで最初の悩みが解決したことにはなりません。これは、多くの先生方が感覚として知っていることです。
では、そういうときにはどうしたらよいのでしょうか。
ここでは、セールスフォース・ドットコムという、現在大成長中の会社を眺めながら考えてみたいと思います。
「世界は顧客が変える。今起きている変化の源はお客様なのです」
これは、セールスフォース・ドットコム(以下、SF website)について書いている本ー『世界は顧客が変える:セールスフォース・ドットコムの挑戦』の最初の一文です。
SFについて、wikipedia は以下のように説明しています。
セールスフォース・ドットコムは、米国カリフォルニア州に本社を置く、顧客関係管理ソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスの提供企業である。ビジネスアプリケーションおよびクラウドプラットフォームをインターネット経由で提供している。1999年3月に、マーク・ベニオフにより設立された。(wikipediaより)
激戦が続くアメリカIT業界のなかで、1999年の設立以来急成長を続けている。
創業したのは、アメリカ・オラクル出身のマーク・ベニオフ会長兼CEO等。
設立からわずか5年で、ニューヨーク証券市場に上場、2016年1月期の売り上げ約66億ドルは前年比24%の成長です。現在では、日本を含む各国で展開していて、従業員24000人を数えている。
このブログの趣旨からいって、このSFについて詳しく述べることはしません。
でも、ここに、教育者目線から見ても、興味深い部分がいくつかあるので紹介したいと思います。
共同創業者にパーカー・ハリス氏(CTO)がいますが、このハリス氏とベニオフ氏は「二人三脚経営」で、この時代を切り開いているといえるのですが、この2人が大切にしていることのひとつが、「顧客との対話」です。
・「新サービスや技術を発表して、顧客から反応を聞く。顧客に受け入れられなければ意味がないからだ。顧客の声を改善や成長に活かす」(ハリス氏)という彼らの発想は、SFが表面的には典型的なシリコンバレーのハイテク企業の形を見せながら、実際には顧客の課題やニーズに徹底的に寄りそおうとしている会社。消費者が予想しない画期的ハイテク機器をを世に送り出すのではなく、「顧客本位」や「信頼できる技術」を守り抜くスタイルを取る。「人と人との接点ではじっくり(顧客接点)」でも、「素早い技術開発と世界展開」をもつ。この両者を実現することが、強さ。
・新しい常識を生み出すには、人々が当たり前だとか一般的と思っていることに、考え直すきっかけを与えることが大切になる。つねに、既存の価値観や思い込みに根本的に問いかけ続ける。
結局、時代の変化や社会が大きいなかでも、人と人との接点で大切にされるのは、相手を大切にする思いです。
お客さんを大切にするとき、必ずお客さんとの接点が生まれています。
技術者であるとしても、「何が求められているか」ということから、完全に離れることはできないのかもしれません。
そうすると、公立小学校にいながら「この時代だから、新しいことを教えなければ」という気持ちもあるかもしれないけれど、これまでやってきたことをひとつひとつ大切にすることは、これまでも求められていくように思えます。
ただ、このような社会状況を考えるならば、「教えておしまい」という教え方では足りません。前で先生が授業をする。黒板に書く。それを子どもたちが写す。これは、どこでも役に立たない。このような力をつけるのは、もう終わりにしたいです!!
共に学ぶ仲間がいるのだから、教室では、相手との接点で相手を大切にする練習をするべきです。
塾などで習って、この時間にならうことを知っている。
そういう子どもがいます。
でも、そこでぼくたちは、問わなければいけない。「それでどうするの?」と。
その子たちには、その子たちの目標をもたせなければいけないと思います。
ぼくは、基本的には、分かっている子どもは「表現力」を磨くチャンスだと捉えています。SFの流れのなかでいえば、「接点で相手を大切にする」ためのチャンスです。こんな練習の場は、1人の学習ではあり得ません。
あいてが分からない。
しかも、その相手というのはクラスメイトです。
クラスメイトが困っているときに、どうするか。
そういう問いだと受け止めるように、子どもたちに伝えます。
仲間が分かっていなくて困っているのに、それをほっておける人たちは、「分かっている」状態だとしても、大切なことがわかっていない。それでは、中途半端です。
「答えがわかった」と、「分かるように相手に伝える」あるいは「分かる喜びを相手に知ってもらう」は、まったくちがいます。
ペアトークをいかしましょう。
ペアトークは、流行ですので、ちょっと考えてくださいね。
ペアで交流すればよいというのではありません。
よくあるペアトークは、残念ながら、「相手に教える」ために「一方がすべてしゃべってしまう」ことがよくあります。
これでは足りません。
必要なのは、「相手の状態を知る」ことから初めて、「その状態に応じた言葉選びをする」こと。そして、「相手が納得すること」。
ぼくが担任していた女の子が、ある日授業のあとに泣き出したことがありました。
ペアトークをしたあとのことです。
ぼくは何が何だか分からなくて、その子に聞きました。
「どうしたの??」
その子はいいました。
「わたし、いつも、塾で習った言葉は使わないようにしているの。だって、それをしちゃうと、相手はつまらないかもしれないから。先生の授業はいつも、塾で習ったことを、もっと深くやってくれるから、どうやったら学校で習ったことだけで解決できるかを考えるようにしているんです。でも、今日は、お隣さんと話しているときに、ついつい塾で習った言葉を使っちゃったんです。わたし、悔しいんです」
(「フィールドノート」より)
なるほど。
ぼくは、深く納得してしまいました。
そして、その子の努力が輝かしく見えたし、
そんな大人なことを考えていたことに、おどろきました。
ぼく自身は、
塾で学んだことだって使えばいい。
一生懸命身につけたのだから。
がんばっているってことだから、自信を持てばいい。
と考えています。
でも、その子は、さらにその先に楽しさを探していた。
彼女は、きっと、授業をつかって、「算数の内容」以外のことをしっかりつかみとっているのだと思います。
ここで心を磨くこと。
これが、学校の授業に求められていることのひとつの側面だとすら、考えています。
「世界は顧客が変える。今起きている変化の源はお客様なのです」
変化の源であるお客さんは、サービスを必要としている人。
その人のニーズを見つけ出し、そこに対応する練習は、現在の授業のなかでしっかり行っていくことができるのではないかと、考えています。