算数|子どもの笑顔がぼくの授業への姿勢を変えた
とつぜんですが、ぼくは、算数が苦手でした。
教室の中の賢い子が発表をすると、それが取り上げられて黒板に書かれ、そしてそれを写していくというのが、好きになれなかったんです。
だから、ぼくは、算数が好きではなかったのです。
はじめに
算数がきらいだったぼくですが、「考えることがきらい」っていうわけではありませんでした。
ただ、友だちとおなじように考えていなかったとき、友だちの答えだけが正解として紹介されると、「ぼくはいけないのかな?」っていつも疑問に感じていました。その気持ちがいやだったので、ぼくは算数が好きではなかったし、算数の授業は自分の考えと友だちの考え方の違いが明らかになる授業だったので、苦手だったんです。
出会い1ー筑波の授業
そんなぼくは、「若手」といわれていたころ、筑波大学附属小学校の田中博史先生の授業を見に行きました。そうしたら、子どもたちがいきいきと考えている。お互いを認め合いながら、自分の意見を出して、一人の意見を中心にまた話題が展開していく。別の考え方が出てきても、違った考えが悪いというのではなくて、みんなでそこにも寄りそう。むずかしいことは抜きにして、雰囲気があたたかった。
ぼくは、そんな様子を見て、ショックを受けました。
そして、同時に、くやしくなりました。ぼくは、自分のクラスの子どもたちに、授業のなかであんな気持ちを味わわせてあげていない・・・と。そして、帰りに書店によって、田中博先生の本を買いあさりました。
あの衝撃がきっかけで、ぼくは自分の授業を見直すようになりました。
ぼくは負けず嫌いなので、「附属小学校の生徒だからできるんだ」って思うのがぜったいに許せなかったんです。そう思ってしまったら、一公立小学校の子どもたちに失礼な気がしたから。
「人間はみんな平等」みたいな顔をしながら、自分のなかで「附属の子」と「自分のクラスの子」をわけることは絶対にしたくなかった。だから、ぼくは、自分のクラスの子たちがにこにこ学び、成長していける授業をつくりたいと思ったんです。それが、きっかけです。
出会い2ー子どもの笑顔・言葉
それから、ずっと算数をやってきました。
途中、算数からほかの教科に行こうと思ったこともたくさんあります。
でも、算数を続けてきました。
それは、やはり、子どもの存在です。
子どもがいきいきとするのです。わかったとき。問題に取り組んでいるとき。
はっきりわかれる。
楽しければいきいきするし、つまらなければ静か。
ぼくは、だんだん「楽しくていきいきしている子どもの笑顔を見ていたい」と思うようになりました。それからです。授業を変えようという気持ちに勢いがついたのは。
ある日、子どもから言われました。
「先生、算数って楽しいな。だって、友達と一緒に答えを作り出していくんだもんな」
そんなこと言われてしまったら、もう、やめられません。
結局、一教師の私は、子どもたちの笑顔や子どもたちの声を聞きたくて、算数の授業の勉強をしているんだと感じています。