偶数奇数や約数倍数を学びながら、概念を明確にしていくプロセスを学ぶ
整数の性質
5年生では、偶数と奇数の学習があります。
よく聞く言葉です。日常生活でも、子どもたちは、わりと早く、この言葉を知っています。でも、よくあるように、子どもたちはそれほどしっかり意味を理解して使っているわけではないようです。なんとなく、「『ニィ、シィ、ロォ、・・・』は偶数っていうんだよ」というふうに、イメージしているようです。「偶数はわれて、奇数はわれない」というような言葉も、「算数得意!」というような子どもから出てきたりします。
概念を学ぶ授業について
概念を学ぶという機会は、算数の授業では様々あります。速さ、割合、単位量、広さ、かさ、などなど、様々な概念の理解を深めていく機会があります。そうした授業の作り方を考えてみたいと思います。
偶数・奇数
偶数と奇数は整数を次のような観点で分けることから生まれてきます。
1. 分ける
<観点>
「2で割って余りがないかどうか」
<結果>
「2で割って余りがない(割り切れる)整数」=偶数(丁、even number)
「2で割って余りが1になる(割り切れない)整数」=奇数(半、odd number)
<考える>
「0の扱いをどうするか?」
・・・0も偶数とする。0÷2で余りがないから。
ここで子どもたちが身につけようとしているのは、「整数について、観点を決めて分ける」ということ。
「〇〇のような見方をすれば、こういうふうに分けられる」という考え方をできるようにしたいわけです。
2. 分けたら、次のステップにすすみます。その性質を理解するということです。
・数直線上にどのようにならぶのか。
・偶数と奇数はどのように見分けられるのか。
・計算すると、その結果には、どのような規則がみられるのか。
これらについて、知ることになる。
たとえば、最初の性質について、
「偶数と奇数は、交互にならんでいます」
ということを、黒板に書いて、子どもに写させ、「覚えておきなさい」と言うならば、板書する時間があれば終わります。でも、小学校段階では、ただ一方的に教えられて知るというより、自分たちで見つけるようにしたいものです。
活動の結果、
「並び方にきまりがあるのかな?」(疑問)
「あれ?交互にならんでそうだぞ・・・」(疑問)
「先生、偶数と奇数は、交互に並んでいるよ!!」(発見)
というふうに、子どもの疑問や発見が生まれるよう、授業をデザインします。
偶数と奇数を見分けるにしても、1回1回2で割っていた子どもが、
「あれ?偶数は、いつも一の位が0、2、4、6、8になってるぞ。本当かな?」
と気づく。
大人にとっては当たり前のことでも、子どもが大発見をしたかのように演出する。そうすることで、算数の授業ではいろいろな大発見のチャンスがあると、子どもたちに思わせてあげたいものです。
>>「偶数奇数の加法」
倍数と約数
倍数:
<観点>
ある整数について
「その整数の整数倍になっているかどうか」
<結果>
「整数倍してできる数」=もとの整数の倍数
「整数倍してできない数」=もとの整数の倍数ではない
約数:
<観点>
ある整数について
「その整数を割り切ることができるかどうか」
<結果>
「割り切ることができる整数」=もとの整数の約数
「割り切ることができない整数」=もとの整数の約数ではない
さらに細かくみていく
<観点>
約数の中で「いくつかの整数に共通な約数になっているかどうか」
<結果>
「いくつかの整数に共通な約数になっている」=公約数
<観点>
公約数の中で
「最も大きいものはどれか」
<結果>
「最も大きい」=最大公約数
まとめ
こうみてみると、この単元を学習の基本の流れは、
「分ける」「性質を探求する」の連続になっています。
その過程で、より細分化して考えるとか、条件を整理し、明確にして考える体験をさせていきます。
そうすると、探求の最中は、子どもたちの活動は「だったらさぁ」と言葉を交わしながら、少しずつめあてを変え、自ら理解を深めようとする姿になることが想像されます。こんな姿が、自分のクラスの中に生まれてくるように授業をデザインしていきます。
偶数、奇数、倍数、約数等のような概念を教えるのに、短時間で済みそうな部分に時間をかけるのは、ひとつの対象であっても、少しずつ視点を変えながら多角的に見ていくことで、あらたな発見があるということを感得させたいからだと、感じます。