ぼくのきせき

「子どもの心に火を灯す ⇄ 自分の心に火が灯る」 実現めざした学びの軌跡

読書|雑誌記事|小路氏(アサヒグループHD代表取締役兼CEO)に学ぶー声なき声を大切にする

2019年2月号『プレジデント』で特集している「言いにくい話の伝え方」のなかから小路明善氏(アサヒグループHD代表取締役兼CEO)の記事を読みました。氏の記事を、学級経営との関連で読み解いていきたいと思います。ビジネスの世界のトップの話、学級経営と関係ないと思ったら大間違い。組織を動かす人の目線は、ぼくたちに、大きな刺激を与えてくれます。

 

まず、冒頭、氏は、厳しい内容を話さなければいけないときには、「声なき声」を上げる人のことを考えるに心を砕いているといいます。

何より、これは、ぼくたち先生と呼ばれる人が最も気にしなければいけないことのひとつではないでしょうか。

 

クラスでもそう。

「言わなくても大丈夫」と考えてしまう態度は改めなければいけませんが、「声なき声」を聞くようにぼくたちはつとめなければいけない。それは簡単には聞こえませんが、ちょっとした行動の変化、しゃべりかたの変化、言葉の使い方の変化、そういうところに気付けるアンテナを磨いておくことが求められます。

 

 

では、「声なき声」を聞くことの大切さを強調する小路氏の記事のなかから、教育にかかわる者として気になるポイントを見つけていきたいと思います。

 

小路明善氏から学ぶ3ポイント

 

 

1.トップディシジョンのあり方

トップの大きな役割のひとつはトップディシジョン。でも、決定事項を実行に移す段になって、言葉巧みに説得しようとしても、相手の心を動かすことはできない。

>>これを意識している人と意識していない人とでは、クラスの雰囲気にちがいがうまれてきます。誤解を恐れずに書けば、相手が子どもですので、強制的にも動かすことができます。でも、多くの場合は、それは続きません。そして、その状態が続いている場合、クラスの中は思い雰囲気に包まれます。そういうクラスでは、子どもたちがかわいくならない。年相応以上に大人びてきて、やさしい雰囲気が生まれてこない。

 先生の仕事のひとつはトップディシジョン。というより、先生が決断することの連続です。そして、それは子どもの行動ひとつひとつに影響します。それなのに、その趣旨を伝えることができない、もしくはテクニックで何とかしようとするのは、組織のトップとして失格といえます。

 

2.苦しいプロセスを大切にする

変化において不平や不満が湧き起こったとき、誠意をもって伝えたのは、決断に至るまでの苦渋の気持ち。言霊で語りかけると同時に、具体的なフォローをする。そして、実際に動くときには、自信を示す。

>>これも、普段からやっていきたいことです。学校の先生というのは、なぜか、プロセスをあまり語ろうとしない。でも、それは、いまでは通用しないと、ぼくは思っています。子どもたちに、普段からていねいに経緯を話していく。その姿こそが、「経緯を大切にする」哲学を子どもに伝えることができる。「どうせ、やっても無駄だし・・・」みたいなことを言う子どもがいれば、「結果じゃなくて、そこに至るまでのプロセスが大切」ということを言います。ぼくたちは、「そこに至るまでの道筋を大切にしたい」と思ってる。でも、ぼくたち自身は、結果しか見せていないことが多い。それでは、足りないのです。

 もちろん、ひとたび子どもが動き始めたら、自信のある態度で子どもの支えになってあげましょう。その結果間違いが生まれたとしても、そのチャレンジ自体を認める。その積み重ねこそが、チャレンジできる子どもを育てていくと思います。

 

 

3.経営トップに必要な力

  a) 先見力:社会の変化の兆しを読み取る

  b) 決断力:経営方針を決める

  c) 実行力:衆知を集めて経営目標を達成する

  x) 信頼を得られる人柄:経営者にふさわしい力量、経営成功の実績

>>どれも、教師に必要な力だと思いませんか。気をつけなければいけないのは、これらの力は、何もしないで手に入るものではないということ。ぼくたちは、若いころから担任を任されると、自分を磨くことをある程度怠っても、クビになったりはしない。でも、だからこそ、ぼくたちは、その安定性のなかで、「学び続けるという強い意志」をもち、子どもたちに示しかなければいけないのだろうと思います。

 

言霊を大切にする、無言のコミュニケーションを大切にすると、氏は繰り返し主張しています。

そこから、「言わなくても伝わる」的な部分を想像してしまいそうですが、氏の指摘していることはまったくの逆でしょう。

ぼくたちは、「どうすれば?」という問いに対して、「技術」「テクニック」を学ぼうとしがちです。明日の授業で困れば、授業のモデルを探し求める。

小路氏の文章からは、テクニックで何とかしようとすることへの、警鐘のようなものを感じます。

 

(2019.2.18『プレジデント』pp.32-33より)