ぼくのきせき

「子どもの心に火を灯す ⇄ 自分の心に火が灯る」 実現めざした学びの軌跡

授業・学級経営|いまだからできる、来年度の準備ー子どもと一緒に自己分析(授業編)

もう、今年度を終えようとしています。

先生方は、どんな気持ちでこのときをむかえているのでしょうか・・・。

なかには、「そんなこと言わないで・・・今が勝負のところ」っていう人もいるでしょう。それは、ぼくも、おんなじです。

でも、いまだから、いま目の前に子どもたちがいるからできることがある。

これをやっておくかどうかで、来年度が全然ちがう。そんなポイント、あります。

ここまで一緒に過ごしてきた子どもたちから、もう少しいろいろと学んでおきたいと思います。 

 

 

キーンコーンカーンコーン。



いつもの終業のチャイム。

 

子どもたちは勇んで飛び出していく。

 

元気な姿。

 

さっきまで「チーン」となっていた子どもが、授業になると「ワイワイ」。



さて、今日は、ここで一人つかまえてしまいましょう。

ここまで1年間一緒にやってきたんだもの。

 

ちょーっと腹を割って、子どもとトーク

先生:「なあ、○○。ちょっとごめん。教えてほしいんだ。遊びたい気持ち、すっごくわかる。でもさ、ちょっとだけ付き合ってくれない?休み時間元気だろ。でも、授業中、チーンってなってるだろ。あれ、どうしてなの?」

 

このときに返ってくる子どもからの反応は、

おそらく、

多くの場合、

 

驚くほど的をいています。

 

そして、これが、大変重要な診断になっています。


この診断、大事ですよ。

研究授業とかありますよね。

授業をすると、授業後、講師の先生方から好評をいただいたりします。

 

でも、じつは、あの好評よりも、鋭くて的を射た答えを、子どもたちはもっています

 

(失礼をいってすみません。あくまでも、もしかすると・・・です)。

 

「だってつまらないもの」


なんてことをいってもらえるなら、それは、自分を責めてはいけません。


「本音を聞ける関係を築いてこれたんだな」

 

 

と、まあ、受け止めます。

 

笑顔です。

 

笑顔。

 

だいたい、社会の中に「勉強はつまらないもの」という価値観が広がっているんです。

子どもだって簡単に、「勉強はつまらない」といいます。

 

でも、ここでぼくたちも一緒になって、「そうだ。勉強はつまらない」となってはいけません。

 

「学ぶことはつまらない」を教えるのは罪 

ぼくたちの仕事のなかで、「学ぶことはつまらない」と教えてしまうことは、一番の大きな誤りです。

 

これは、罪に近い。社会に「勉強=つまらない」という方程式が広まっているなかで、「いつ、どんなきっかけで、勉強はつまらないもの」となってしまうのかを突き止めることが難しい。社会・文化にそのような価値観が浸透していると、そこで生活している人たちは、耳だけでなく肌からもそういう感覚を吸収している(感じがする)。

難しいから、だれにも罪はない、みたいになってる。

 

でも、それがいま、大きな問題だと思います。

 

新指導要領でも「学びに向かう力」に力をいれたりしても、社会全体で「勉強=つまらない」をすり込んでしまっているんです。無意識に。

きっと、鋳型にはまった工業製品のような人間を生み出すなら、「勉強=つまらない」けど「勉強=耐えるもの」という価値観は役に立つでしょう。その価値観をしみこませる学校は必要だった。でも、いま、学校がこのラインで行くと、おそかれはやかれ学校は破綻します。ぼくは、そう思っています。


1歩つっこんでー「どこがつまらない?」

話がそれましたが、「勉強がつまらない」という彼に、もう一歩、「どういうところがつまらない?」とつっこんでいく。この質問は、1年間一緒に過ごしてくる中で築いてきた関係から生まれてきます。


「先生のためだと思って教えてくれ。先生、もっといい先生になりたいんだ」




という思いを感じれば、子どもは心を開いてくれる。

子どもだって、先生に悪いことを言いたくはない。

でも、小学校段階ではすくなくとも、自分たちのために真剣になる大人のことを、たいていの子どもたちは無視しません。

もし無視したり、つめたく返してくるとしたら、それは逆に、その子の心に寄り添う必要がある。


先生は知っている。

「楽しい」は、まっていてもやってこない。


でも、ここで説教じみたことを子どもに言ってもしかたない。

 

だいたい、ここで説教がはじまってしまうなら、「正直にうちあけなければよかった・・・」になってしまう。

 

先生っていうのは、

よかれと思って余計なことをしてしまうことがよくあります・・・。


ここは、ぐっと我慢して。来年度の最初の語りに、昇華させていきます。

 


得た情報をいかすのは、4月


ぐっと我慢してきたことを、4月の最初の授業で話しましょう。

「先生、去年の最後に聞いたんだ。ある友だちに。せっかく休み時間とか楽しく遊べるのに、授業になるとチーンって静まってしまうんだい?って。そうしたら、返ってきたよ。『つまらないから』って。先生、この気持ちよくわかるんだ。まず、こうやって返してくれた勇気に先生は感謝している。先生、今年、楽しい授業をめざしてがんばるよ。でもね、楽しいっていうのは、待っていてもやってこない。先生は、そう信じてる。よかったら、みんなの楽しい授業ってどういう授業かを教えてくれないか?」



エンジンを鍛えるには、子どもの力を借りる


ここから、新年度の授業が始まる。
子どもと約束するのだから、もちろん、そこから自分で準備に時間をかけるのは当然。
それは、ときには、時間がなくて難しいときもある・・・。

でも、次にがんばる。


子どもが嬉々としているとき、それはぼくたちのエンジンになる。新しいエンジン、充電満タンのエンジンなら、ぼくたちは力を発揮できる。
今の時代、ぼくたちがエンジンをかけないと動き出さない子どももたくさんいるっていうのが本音だけど、ぼくたちにもエンジンが必要。ぼくは、そのエンジンは、子どもたちと一緒に鍛えていくものだと思っています。



年度末に語ってもらえた、自分の授業の欠点は、ノートに書き留めておきます。これは、宝物。4月に子どもたちから得た、「楽しい授業」のイメージは、クラスと共有します。


きっと、その授業で先生は言います。「わかった。そういう授業をめざして、これからがんばろう」と。「がんばりなさい」ではないと思う。「がんばろう」と言うからには、それは子どもとの約束です。どうか、その約束を守るというラインを引いてください。子どもの中にはその約束を破ろうとする者があらわれてきますので、そこで勝負になります。


いま、子どもの診断の練習をー質を高めていきましょう(桑田真澄に学ぶ)


いまは、来年度の一年間の方向を決める情報を得るチャンスです。
「あと少し」と、年度の終わりまでの日数を数えるのもひとつ。
でも、この子たちから学ぶ時間が徐々に減っていく。


ヴィゴツキーの「発達の最近接領域の理論」でもレイヴとウェンガーの「正統的周辺参加の理論」でもそうですが、学びは、一人の人間が文化に入っていくときに自然と発生するものです。ぼくたちは、子どもの学びを想定していますが、これではもったいないのです。ぼくたちが、子どもたちの文化に参加していく中で、徐々に「子どもの今・ここ」を学ぶ。子どもになることはありませんが、子どもを知るからこそ、目の前の子どもにあった授業ができるようになる。


旅行会社なら、お客さんの行きたいところから考える。


お医者さんなら、患者さんのカルテと問診から始まる。


相手と、自分の持っているものをすりあわせて、提案を出していくのがプロの人たちの仕事です。

ぼくたちは、子どもたちの<全体>を相手にするのですから、そう簡単ではない。


ただ、ぼくが見てくる中で感じているのは、「授業の達人」とか「学級経営の達人」と言われる人は、カルテを見るのが、問診をするのが、とてつもなく速い。そして正確。


もちろん、この情報収集能力も、経験や知識があるからのもの。すぐにできるわけでもない。でも、意識的に情報収集の練習をすることで磨かれるものです。

どれだけ質の高い内容のある練習をするか、これがポイントだと思いますので、彼らは量と時間をすごく真面目でやってるんですけど、上達しないというのは何かが違うんじゃないか

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練習は量が問題という常識に向けて、桑田真澄選手が語った言葉です。

長ければできるわけじゃない。時間をかければいいってわけじゃない。

今できることを、考えてやる。


ぜひ、教室をぐるりと見回しながら、子どもたちから情報を収集する練習をしてみてください。きっと、来年度の先生の力になります。
 


最後に、もう一言、桑田真澄さんの言葉を。

 

まず、彼らは自信を持ってないですよね。
なんで自信持てないのって言うと、やっぱり自信ないですって皆さん言うんですね。
僕自身も自分の経験から僕も運よく、5万人の中で投げさせてもらいました。
みんなに応援してもらっても、自分自身が自分のことを信じてなければ、いいプレーなんてできないんですね。
自分の一番の応援者は自分自身なんですね。
ですから自分が信じれるような練習をしていないと、あの試合のマウンドで自分なんて信じられないんですね。
じゃあ、どうしたら自信を持てるようになるか。
あの練習のブルペンで、少しの、小さな成功体験ですけど、これを積み重ねていって自分に自信を持っていく、これが僕は非常に大事だと思ってます。
そういう練習を、今、彼らにはしてもらってるんですよね。

 

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